温度応力解析の結果に大きく影響を与える要因の一つに、使用するセメント種類があります。ここでは、普通ポルトランドセメント(N)、高炉セメントB種(BB)、中庸熱ポルトランドセメント(M)、低熱ポルトランドセメント(L)の4種類について解析を行い、温度、ひび割れ指数がどのように変化するか検証しました。
使用したメッシュおよび各種解析条件を以下に示します。
検証対象はU型擁壁とし、X,Y方向を対称面とした1/4モデルとしました。壁厚は1.0m、壁高は4.8m、壁の長さは15mとしました。また、本検証で用いた条件を下表に示します。使用ソフトウェアは、ASTEA MACS Ver.12としました。

| 底版 | 壁 | |
|---|---|---|
| セメント種類 | 普通(N)、高炉B種(BB)、中庸熱(M)、低熱(L) | |
| 単位セメント量(kg/m³) | 300(共通) | |
| 水セメント比(%) | 50.0(共通) | |
| 養生/型枠 | 散水養生7日(14W/m²℃)/合板7日(8W/m²℃) | |
| 打設日 | 7月1日 | 7月15日 |
| 打込み温度(℃) | 30.0(外気温+5℃) | 30.0(〃) |
| 線膨張係数(μ/℃) | 高炉B種=12、その他セメント=10 | |
| ※準拠基準…2022年制定コンクリート標準示方書[設計編] | ||
図2-1に各セメント種類における温度コンター図、図2-2に壁内部の温度時刻歴グラフを示します。同図より、セメント種類によって壁内部の最高温度は大きく異なり、L<M<BB<Nの順に高くなることがわかりました。
なお、セメント種類ごとの断熱温度上昇グラフ(図2-3)では、普通セメントよりも高炉セメントB種の終局温度が高くなっていますが、壁内部が最高温度に達する材齢2日目までの温度上昇速度は、普通セメントが高炉セメントB種を上回っているため、本解析では最高温度がBB<Nになったと考えられます。




図2-1 解析結果(温度コンター図)

図2-2 温度時刻歴グラフ(材齢0日~14日)

図2-3 断熱温度上昇グラフ(材齢0日~14日)
図3-1に各セメント種類におけるひび割れ指数コンター図、図2-2に壁内部のひび割れ指数時刻歴グラフを示します。同図より、セメント種類によって最小ひび割れ指数が大きく変わることが確認でき、最高温度が高いセメントほどひび割れ指数が小さい(=ひび割れしやすい)ことがわかりました。




図3-1 解析結果の比較(ひび割れ指数)

図3-2 ひび割れ指数時刻歴グラフ
最高温度、および最小ひび割れ指数の解析結果を表4-1に示します。セメント種類の違いが温度応力解析に与える影響について調べた結果、以下のことがわかりました。
| セメント種類 | 最高温度(℃) | 最小ひび割れ指数 |
|---|---|---|
| 普通(N) | 67.70 | 0.56 |
| 高炉B種(BB) | 63.58 | 0.63 |
| 中庸熱(M) | 56.67 | 0.91 |
| 低熱(L) | 49.26 | 1.27 |
なお、モデル形状や条件が異なる場合は、当然解析結果も異なりますので、本検証はあくまで解析例の一つであることをご理解ください。ひび割れ対策案としてセメント種類の変更を考慮される場合、本検証結果がご検討の一助になれば幸いです。